「コーチングとカウンセリングはどう違うのでしょう?」
受講生の皆さんから時々、質問をいただき、33回名古屋Aクラスの方からも
質問が出ました折に、ブログに書きますと約束をいたしました。
JCDA向上研修でも、コーチング・メンタリングのコースが開催されています。
※JCDA…日本キャリア開発協会
このテーマについては、様々な場面で議論されているので
二次試験対策という観点からも、整理をしてみたいと感じていました。
まず、『キャリアの心理学』で知られる渡辺三枝子先生は
「コーチングは仕事の
パフォーマンスの改善」と述べ
一方で、カウンセリングについては、下記のように述べています。
「自己洞察を深め、自分の問題を解決し、新しい行動がとれるようになる」
カウンセリングに関わる説明が、ややスマートでない印象を受けますが
「自分そのものの変容」と「変容に伴う行動変容」を指しておられるのでしょう。
だとしたら、渡辺先生のご意見には、賛同できます。
つまり、コーチングはある事柄、出来事についての課題解決や目標達成をめざし
カウンセリングは、内面の課題解決や目標達成をめざしていると思います。
そこで、カウンセラーは事柄、出来事について訊くのではなく
クライエントの内的世界を理解しようと聴き、聴くことをとおして
クライエントの自己探求を促し、クライエントが自らの問題に気づき
自らが、自らを変化させようとして、感情、思考、行動を変えていく
・・・というプロセスに寄り添うことを行うのです。
もっとも、カウンセリングのプロセスにおいて
事柄、出来事に関わる問題解決が、必要となることもあります。
ある企業に就職する…なんていうのは最たる例です。
こうした事柄、出来事に関わる問題解決へのチャレンジをとおして
結果的に、自己変容、行動変容が促されるケースもあり
そうしたケースでは、コーチングによるアプローチはとても有効です。
ということは、カウンセリングのプロセスにおいて
コーチングという手法を使うこともあり、効を奏することもあります。
但し、始めから最後まで、コーチングという手法でアプローチをしていたら
事柄、出来事における問題は解決できても、自分という存在の変容や
それに伴う行動の変容は促されないかもしれません。
CDA養成講座にも、コーチングをすでに学ばれた方がいらっしゃって
ロープレなどでカウンセリングというより、コーチングをされることがあります。
クライエントの話しを引き出すのも上手だし、面談の流れもスムースで
クライエント役やオブザーバー役からも「上手!」とほめられることが多く
水を差しにくいのですが、でも、違うんだけどな…と思いつつ
その方との信頼関係やその時の状況をふまえ、「違う」という指摘を
差し上げたり、差し上げなかったりしています。
出来事に関わる問題が解決すれば、たいていは「すっきり」しますから
クライエントは「ありがとう!」となることが多いのです。
そして、出来事の問題解決によって、かえって自分を変えるチャンスを
見過ごしてしまう…ということもあり、カウンセリングとしては微妙です。
一方、自己に向き合う準備ができていないクライエントや
問題解決をとおして、結果的に自己変容につながるようなケースでは
コーチングによって、事柄、出来事の問題解決をめざしてもよいでしょう。
大切なことは、カウンセリングのプロセスのある局面において
カウンセラーがコーチングという手法を使っているという意図
自己意識をもって、コーチングという手法を使っているかどうか
…だと思うのです。
いずれにしても、二次試験はカウンセラーとしての資質を問う試験ですから
全面的にコーチングになってしまったら、及第点はとれないはず…
二次試験の合格、不合格の判定基準は不明ですが
もし、私が試験官なら、試験中に全面的コーチングを観てしまったら
カウンセリングではないよねぇ…というわけで、及第点は出さないと思います。
心の声を聴いてくれる人(カウンセラー)がいる中で
発話思考…、自ら(クライエント)も自らの心の声を聴き
自らの心の叫び、つぶやき、本心に気づくことをとおして
新しい自己への変革をめざすのがカウンセリング…と私は考えています。